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運転日報とは?社用車の運転日報の役割や書き方を解説

公開日:2024年12月17日

運転日報とは?社用車の運転日報の役割や書き方を解説

一定数以上の社用車を有する場合や、運送事業を営む場合、運転日報(運転日誌)の作成・保管が法律で義務づけられています。運転日報を作成することで、企業は法令遵守を徹底するのと同時に、従業員の労務管理や車の効率的な運用も実現できます。では、運転日報には何を記載し、どのように管理する必要があるのでしょうか。

社用車の運転日報とは?

運転日報とは、社用車を運転する際に、その運行状況を記録する書類のことです。運転者の氏名や運転開始・終了の日時、走行距離や経由地などが記載され、どのように車が使用されたのかを詳細に把握できます。そのため、運転日報は車の運行履歴となるだけでなく、運転者の安全管理や労務管理にも活用されます。社用車を管理する企業は、日常的に従業員がどのように車を利用しているのかを正確に知っておかなければなりません。運転日報は、そのための根拠資料として役立ちます。また、社用車の台数や業種によっては運転日報の作成・保管義務が法律で定められているため、適切な管理が必要です。

運転日報を作成する目的

運転日報は、単に業務の記録のために作成するわけではありません。運転日報には、従業員の安全運転や労務管理、社用車の効率的な運用といった、事業の円滑な運営に寄与する役割があります。

安全運転を徹底するため

運転日報に日々の運行記録を明確に残すことは、運転者の安全運転意識を高め、事故や違反を未然に防ぐことにつながります。運転日報には、運転時間や走行距離などが記載されるため、これらのデータをもとに無理のない運行計画を立てたり、従業員の過労や睡眠不足を防止したりすることも可能です。運転に関する定期的なフィードバックや車の日常点検の習慣化を徹底すれば、安全運転のための改善策も講じやすくなるでしょう。

従業員の労務管理を行うため

運転日報には、従業員が何時に運転を開始し、何時に終了したのかが記録されるため、正確な乗車時間の把握が可能です。こうした記録は労務管理の信頼性を高め、従業員との間で起こり得る労働時間などに関する紛争(労使トラブル)を未然に防ぐことにつながります。また、運転日報は法定労働時間を超過した際の賃金計算や、休憩時間の適切な管理にも活用できます。企業が従業員の働き方改革に取り組む際も、改善点を見つけ出すのに有効な資料となるでしょう。

社用車の効率的な運用を行うため

運転日報によって、どの車がどのように使用されているのかを把握すれば、稼働率の低い車の特定や不要な運行の削減ができます。また、走行距離や燃費に関するデータを分析することで、車ごとのメンテナンス計画を最適化したり、新たな車の導入タイミングを決定したりすることも可能です。特に、複数の社用車を運用する企業では、運転日報が各車の稼働状況を正確に把握するための情報源となります。こうした情報をもとに、運行コストを定期的に見直すことは、会社全体の業務効率アップやコスト削減につながるでしょう。

運転日報の作成が義務付けられている企業とは?

運転日報の作成は、社用車を有するすべての企業に義務づけられているわけではなく、一部の業種や状況下で必要となるものです。該当する場合は、法令遵守のため、運転日報をしっかり作成しなければなりません。

貨物自動車運送事業・旅客自動車運送事業を営む企業

【貨物自動車運送事業】
貨物自動車運送事業とは、トラックなどを用いて有償で貨物を運搬する事業を指し、社会や経済のインフラを支える役割を持ちます。この事業を営む場合、国土交通省の「貨物自動車運送事業輸送安全規則(第8条・第18条)」に則り、運転日報の作成と運行管理者の選任が必要です。その目的は、睡眠不足によるドライバーの過労や居眠り運転、過積載による事故などを防止し、安全を確保することにあります。

【旅客自動車運送事業】
旅客自動車運送事業とは、バスやタクシーなどを利用して人を運ぶ事業を指します。旅客自動車の運行においては、ドライバーに加え、乗客の安全も確保されなければなりません。そのため、運転日報の作成によって運行状況を記録すること、および、旅客自動車の保有台数や使用状況ごとに定められた運行管理者を選任することが、「旅客自動車運送事業運輸規則(第25条・第47条の9)」で定められています。

一定以上の社有車がある場合も安全運転管理者の選任が必要

運送事業以外で社用車を保有する場合、運転日報の作成が義務づけられているのは、次のいずれかの条件に当てはまるケースです。

乗車定員が11人以上の社有車が1台以上ある場合

①以外の社有車が5台以上ある場合

これら条件は、「安全運転管理者」の選任が必要となる基準です(道路交通法施行規則第9条の8)。安全運転管理者とは、社有車を適切に管理し、従業員が安全に車を使用できるように監督する責任者を指します。具体的には、運転者の健康状態や勤務時間の管理、車の点検・整備、安全運転に関する教育の実施などを通じて、事故の防止や安全意識の向上を図るのが主な役割です。安全運転管理者の業務には、各ドライバーに運転日報を作成させることによって社有車の稼働状況を把握することも含まれます。そのため、安全運転管理者の選任が求められる事業では、同時に運転日報の作成も義務づけられることになります。

運転日報の保存期間と管理を怠った場合の罰則は?

運転日報の作成が義務づけられている企業は、その日報の保管についても適切な対応が求められます。運転日報の保存期間や、管理を怠った場合の罰則に関して、正しく理解しておくようにしましょう。

法令で定められた運転日報の保管期間は原則1年

貨物自動車運送事業および旅客自動車運送事業では、運転日報の保管期間は1年間と定められています(貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条、旅客自動車運送事業運輸規則第25条)。一方、社用車・営業車が一定の条件に該当し、安全運転管理者の選任が必要な企業の場合は、道路交通法施行規則で運転日報の具体的な保管期間は明記されていません。ただ、同規則ではアルコールチェックの記録の保管期間は1年間と規定されています。

労働関係に関する重要な書類の保管期間は5年

運送事業に関する規則で義務づけられている運転日報の保管期間は1年間ですが、労働基準法では、労働者名簿や賃金台帳などの「労働関係に関する重要な書類」について、5年間(当分の間は3年間)の保管を義務づけています。そのため、運転日報もなるべく5年間保管するのが望ましいでしょう。運転日報は労働時間を証明するものであり、賃金計算の根拠資料にもなる重要な書類であるためです。仮に、従業員との間で労働時間に関する紛争が起きた場合、未払い賃金の請求時効は3年(将来的には5年)です。運転日報を長期的に管理しておくことで、トラブル発生時や監査の際に適切な対応ができます。

参照:連合|変わりました!消滅時効

安全運転管理者の未選任の場合は50万円以下の罰金

運送事業ではない事業を営み、安全運転管理者を選任すべき場合に、その選任を怠ると、50万円以下の罰金が科せられます(道路交通法第119条の2)。安全運転管理者は、車の運行や従業員の運転状況を管理し、交通事故などのリスクを最小限におさえる重要な役割を担う立場にあるためです。安全運転管理者は、選任した日から15日以内に事業所を管轄する警察署へ届出をしなければなりません。

安全運転管理者の未届けの場合は5万円以下の罰金

選任した安全運転管理者を管轄の警察署に届け出ていない場合も、5万円以下の罰金が科せられます(道路交通法第120条の2)。選任そのものを怠るケースと比較して罰則は軽減されますが、車の適切な管理体制を構築し、安全に社用車を運用するためには、選任後の速やかな届出が求められます。

悪質・重大な法令違反は行政処分の対象

貨物自動車運送事業の場合、重大な交通事故を起こしたり、法令違反が疑われたりする企業に対し、国土交通省による監査が入ることがあります。監査の結果、違反行為が認められれば、「車両使用停止」「事業停止」「許可取消」などの行政処分が下される可能性があります。監査の内容には運転日報に関する項目も含まれ、作成・保管を怠っている場合だけでなく、改ざんや事実と異なる記載をした場合も、警告や車両使用停止の対象です。違反内容が悪質であったり、違反行為が繰り返されたりするケースでは、事業停止や許可取消もあり得ます。

運転日報に記載すべき内容とは?

運転日報には、社用車の運行状況を適切に記録するため、いくつかの必須項目が定められています。これらの項目を正確に記載することで、運行の全体像の把握や法令遵守、安全管理に役立てることが可能です。

運送業者の場合

貨物自動車運送事業、および旅客自動車運送事業の運転日報には、必ず記載する内容が4点、該当する場合に記載する内容が事業ごとに数点定められています。具体的な内容は、次のとおりです。

必ず記載 ・ドライバーの氏名
・車の車種やナンバー
・業務開始および終了の場所と日時
・主な運行経路と距離
該当する場合に記載

☆貨物自動車運送事業が対象
★旅客自動車運送事業が対象
<運転を交替した場合>☆★
・交替した場所と日時

<休憩・睡眠を取った場合>☆★
・休憩・睡眠を取った場所と日時

<施設で睡眠を取った場合>★
・施設の名称と場所

<車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の普通自動車の場合>☆
・貨物の積載状況や集貨・配達を行った場所、付随作業の内容

<交通事故や著しい運行の遅延、そのほかの異常な状態が発生した場合>☆★
・状況の概要と原因

<運行経路の指示があった場合>☆
・指示の内容

<車掌が同乗した場合>★
・車掌の氏名(交替があった場合は、その場所と日時も記載)

参照:貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条

参照:旅客自動車運送事業運輸規則第25条

社用車・営業車の場合

社用車や営業車を使用している場合、運転日報に記載すべき内容は「運転者名」「運転の開始および終了の日時」「運転した距離」「その他自動車の運転の状況を把握するため必要な事項」の4点です(道路交通法施行規則第9条の10)。運送事業と比較して項目数は少ないですが、安全運転管理者の業務として、しっかり対応する必要があります。

運転者の氏名

運転日報には、その日の運転を担当した従業員の氏名の記載が必須です。誰が車を運転していたのかを明確にし、トラブルが発生した場合などの責任の所在をはっきりさせる意味合いがあります。特に、複数の従業員が社用車を使用する企業の場合、ドライバーの情報は運行管理をする上で重要です。なお、法的に義務づけられているわけではありませんが、同乗者がいる場合は、その旨も記載しておくとよいでしょう。

運転開始・終了の日時

運転開始と終了の日時を正確に記録することは、ドライバーが車を使用した時間の把握と勤務時間の確認につながります。また、万一事故などが発生した際、運行状況を確認するための情報としても活用が可能です。道路交通法施行規則では定められていませんが、途中で休憩や仮眠を取った場合は、その時間の記録も推奨されます。正確な運転時間を算出することで、長時間の運転になっていないかをチェックし、過労防止の対策ができるからです。

走行距離

走行距離の記録も、運転日報において欠かせない項目です。走行距離は車のメンテナンス計画に直結するため、どの車がどれだけ使用されているかを把握する必要があるからです。たとえば、定期点検やタイヤ交換、オイル交換などの時期は、走行距離のデータが判断材料の1つになります。また、必須項目ではないものの、車の使用目的や目的地(営業先の企業名など)も記載しておけば、社用車が適切に使用されているかどうかを確認しやすくなります。

その他自動車の運転の状況を把握するため必要な事項

道路交通法施行規則では、運転日報に記載すべき項目として「その他自動車の運転の状況を把握するため必要な事項」が定められています。しかし、その内容は特に指定されていないため、この項目に記載する内容は企業ごとに定める必要があります。たとえば、どの車を使用したか、運行ルートや立ち寄り場所はどこか、給油はしたか、点検項目は何か、アルコールチェックの結果はどうだったかなど、必要に応じて記録するようにしましょう。こうした情報は、業務効率の分析や、運行計画の作成にも役立ちます。さらに、企業全体で効率的な運行体制を築き、コストやリスクの低減にもつなげられる可能性があります。

一定以上の社用車を有する場合は、
運転日報の作成が必要

運転日報の作成は、特に運送事業において厳しい規定が定められていますが、そのほかの企業においても、一定の条件に該当する車を有する場合は安全運転管理者の選任と運転日報の作成義務があります。社用車や営業車に関する運転日報に記載するのは、「運転者名」「運転の開始および終了の日時」「運転した距離」「その他自動車の運転の状況を把握するため必要な事項」の4点です。運転日報は、単なる車の運行管理だけでなく、安全管理や労務管理の強化、コスト削減の実現にもつながります。運転日報の作成・保管を適切に行い、従業員の労働環境と車の状態を最適化するようにしましょう。

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監修者 吉田 奈央

2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、一種外務員資格

監修者 吉田 奈央

2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、一種外務員資格

大学卒業後、地方銀行、投資系コンサル会社を経て、2021年独立。金融機関や保険会社、不動産会社が運営するメディアを中心に、編集者として記事執筆や運営に携わる。お金や保険、不動産に関して『知らないだけで損をしてしまう人』を減らすべく活動中。

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