法人向け自動車保険
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社用車の自動車保険を経費にするには?
勘定科目や仕訳例を解説
更新日:2025年1月21日
公開日:2024年5月15日
事業で車を使用している場合、自動車保険料やガソリン代、メンテナンスコストなど、さまざまな費用が発生します。これらの費用は事業に関連するものであれば、適切な処理を行った上で経費計上することが可能です。仕訳のポイントや勘定科目、具体的な計算方法について解説します。
自動車保険料は所得控除の対象外
年末調整や確定申告にて一部の保険は所得控除の対象になります。しかし、2006年の税制改正により損害保険料控除が廃止されたため、自動車保険料は所得控除の対象外となります。
現在、所得控除の対象となる保険料は3種類です。
1, 社会保険料
健康保険、国民年金保険または厚生年金保険などの公的保険の保険料全額
2, 生命保険料
生命保険、介護保険、個人年金保険などの保険料のうち一定額
控除額は保険の種類や契約した年によります。
3, 地震保険料
地震保険の保険料のうち一定額
地震保険は火災保険とセットで加入する保険ですが、所得控除の対象となるのは地震保険料のみとなり、火災保険料は含まれません。
社用車の自動車保険料は経費として認められる?
事業で使用する車の保険料は所得控除の対象とはなりませんが、適切な形で経理処理をすれば会計上は経費(損金)として認められます。ただし、保険の種類や契約期間によって経費の扱いが異なるため、計上方法や勘定科目のポイントを解説します。
自賠責保険・任意保険ともに計上可能
自動車保険には、加入が義務付けられている「自賠責保険」(強制保険)と任意で加入する「自動車保険」がありますが、事業で使用する場合はどちらも経費としての計上が認められています。
自賠責保険
自賠責保険の保険料は、12ヵ月を超える契約で保険料を一括で支払った場合でも、全額をその年の経費として計上可能です。
任意保険
任意保険の場合、数年分の保険料を前払いしても、経費計上できるのは確定申告する年の分だけです。たとえば、3月決算の会社で4月に3年分の自動車保険料15万円を支払ったのであれば、最初の年に計上できる経費は5万円となり、残りの10万円は翌年と翌々年にそれぞれ5万円ずつ計上します。これを「期間按分」と呼び、次のように計算します。
期間按分額 = 総額 ×(経過した期間 ÷ 総期間)
つまり、保険期間に応じて保険料を按分し、その年の経費として計上する金額を算出しなければなりません。そのため、複数年契約の保険料を一括払いした場合は注意が必要です。
自動車保険を経費計上する際の勘定科目
自動車保険料を経費として計上する際は、一般的に「車両費」または「損害保険料」を勘定科目とします。どちらの勘定科目とするべきかは企業によって異なるので、顧問税理士などにご相談ください。
車両費
「車両費」は、車に関連する費用を一括して管理する場合に使用されます。この勘定科目は自動車保険料だけでなく、ガソリン代、車検手数料、修理代など、車にかかるさまざまな費用をまとめて処理できるため、社用車の経費管理がわかりやすいのがメリットです。
損害保険料
「損害保険料」は火災保険や地震保険といった、そのほかの損害保険とまとめて管理する場合に適した勘定科目です。自動車保険は損害保険の一種であるため、この勘定科目を用いることもあります。
自動車保険の勘定科目と仕訳方法
事業で使用している車の保険料を経費計上する際、自賠責保険と任意保険はそれぞれどのように仕訳をしたらよいでしょうか。普通預金から保険料を支払った場合の具体的な仕訳を例に、それぞれの仕訳方法を確認しておきましょう。
自賠責保険の勘定科目と仕訳例
自賠責保険は最長で37ヵ月の契約が可能です。12ヵ月以上の保険料をまとめて支払ったとしても、自賠責保険の保険料は全額を一括で経費計上できるため、確定申告の際に複雑な按分をする必要はありません。
36ヵ月契約で自賠責保険の保険料を25,000円支払った場合
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
車両費 | 25,000円 | 普通預金 | 25,000円 |
自賠責保険の保険料は強制保険であることや金額が大きくないことを理由に一括計上が認められていますが、1年単位で按分することも可能です。その場合は、複数年契約の任意保険と同じ仕訳方法で会計処理を行います。
任意保険の勘定科目と仕訳例
任意保険の場合は、契約期間が1年か複数年かによって仕訳方法が異なります。契約期間が1年の場合の仕訳方法は、基本的に自賠責保険と同じです。
1年契約で任意保険の保険料を50,000円支払った場合
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
車両費 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
3年契約で任意保険の保険料を150,000円支払った場合
契約期間が複数年の場合は「長期前払費用」として資産計上し、年度ごとに期間按分して「車両費」か「損害保険料」として仕訳します。1年目の仕訳は以下となります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
車両費 | 50,000円 | 普通預金 | 150,000円 |
長期前払費用 | 100,000円 |
次年度以降は「長期前払費用」として計上した100,000円の中から、1年分にあたる保険料50,000円をその期の「車両費」として計上していきます。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
車両費 | 50,000円 | 長期前払費用 | 50,000円 |
家事按分を行って経費計上するには?
家事按分とは、事業用とプライベート用の両方に使用している費用を、事業に関する部分と私的な部分とに分けて、経費として認められる分だけを計上する方法です。個人事業主が事業とプライベートで車を兼用している場合は、この家事按分を行うことで、事業用に使用している部分を経費計上することができます。
なお、保険料に加えて、車本体の購入費やガソリン代、駐車場代なども家事按分による経費計上が可能です。
家事按分する場合の計算方法
家事按分によって事業での使用割合を適切に算出するには、その計算方法を知らなければなりません。「走行距離」を用いる場合と「使用日数や使用時間」を用いる場合とに分けて、どのように計算するかを解説します。
走行距離で計算する
「事業用の走行距離÷総走行距離」で按分比率を出すことができます。按分の基準を合理的に説明できるように日付や使用開始と使用終了の時刻、行き先、走行距離などの記録を残しておきましょう。
1ヵ月の総走行距離が300km、そのうち事業で使用した距離が120kmの場合
120km(事業分の走行距離)÷ 300km(総走行距離)= 0.4(40%)
次に、按分比率40%にもとづき、保険料などの事業使用分を計算します。
1ヵ月の自動車保険料5,000円、ガソリン代4,500円、駐車場代8,000円の場合
- 自動車保険料:5,000円 × 40% = 2,000円
- ガソリン代:4,500円 × 40% = 1,800円
- 駐車場代:8,000円 × 40% = 3,200円
これらを合計すると、1ヵ月の自動車保険料として経費計上できる合計額は7,000円となります。月払いの場合は当月分の保険料で計算しますが、年払いの場合は期間按分が必要です。
使用日数や使用時間で分けて計算する
平日は事業用で土・日はプライベートで使う場合や、毎日一定の時間帯を事業用とする場合、使用日数や使用時間による按分計算が認められています。この場合も按分の基準を合理的に説明できるようにきちんと記録を残しておきましょう。
1週間のうち4日を事業で使用する場合
4日(事業で使用した日数)÷ 7日(1週間の合計日数)= 約0.57(57%)
1ヵ月の自動車保険料が5,000円の場合
自動車保険料:5,000円 × 57% = 2,850円
1日の総使用時間が12時間、そのうち事業で使用する時間が6時間の場合
6時間(事業用の使用時間)÷ 12時間(総使用時間)= 0.5(50%)
自動車保険で保険金を受け取る場合の会計処理は?
事故などで加入している自動車保険から保険金を受け取る場合は、会社の収益となるため適切に会計処理する必要があります。勘定科目を「雑収入」として仕訳しましょう。
車両保険金200,000円を受け取った場合
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 200,000円 | 雑収入 | 200,000円 |
保険料をはじめ、社用車に関する費用を正しく会計処理しよう
社用車の自動車保険料は、自賠責保険・任意保険ともに、会社の経費として計上することで税負担の軽減が図れます。仕訳の際は、車に関する費用として「車両費」あるいは「損害保険料」の勘定科目を用いるのが一般的です。また、自家用車を事業用としても使用する場合は、按分計算により経費計上するようにしましょう。自動車保険以外にも、ガソリン代や駐車場代、車検代なども、事業用に使用した割合に応じて経費計上できます。社用車に関する出費は正しく会計処理を行うことが重要です。
監修者 佐藤 寿美礼
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP(日本FP協会認定)
監修者 佐藤 寿美礼
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP(日本FP協会認定)
2016年からフリーランスとして活動。金融や投資、税金、保険、住宅ローン、不動産、社会保障制度など、「お金」関係の記事を中心に編集や執筆をしています。子どもの大学進学やマイホーム購入などをきっかけに、お金の管理に興味を持ち、投資や保険、法律などを勉強中です。