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社用車の日常点検は義務?
点検の種類や頻度、業務内容などを解説
公開日:2024年12月17日
社用車の安全な走行・運用のためには、定期的な車両の点検が欠かせません。日常点検のほか、法律で定められた時期に法定点検や車検を受ける必要があります。社用車を適切に管理するためにも、点検の種類や頻度、日常点検の方法・チェック内容などを把握しておくことが大切です。
社用車の点検は所有者と使用者の義務
社用車を安全に運用するために、社用車の点検における重要性と法規制について把握しておくことが大切です。
社用車の点検を実施する重要性
自動車は使用頻度や時間の経過により徐々に部品が劣化・摩耗し、性能が低下していきます。走行中の故障や事故を未然に防ぐためには、日常的な点検を行うことが重要です。
社用車は一般家庭の自動車と比べて、使用頻度や走行距離が多くなる傾向があるため、より点検の重要度は高くなります。また、社用車の故障により事故が発生すれば、所有者である事業主の責任が問われる可能性もあります。
使用者である従業員(運転者・搭乗者)の安全を守り、事故による事業への影響を防ぐためにも社用車の点検は欠かせないものです。
社用車の点検に関する法規制
道路運送車両法第47条では、「自動車の使用者は、自動車の点検をし、及び必要に応じ整備をすることにより、当該自動車を保安基準に適合するように維持しなければならない」と定められています。
社用車の場合、所有者と、実際に運転する使用者に点検の義務があり、必ず実施しなければなりません。社用車の点検には、日常点検と定期点検、車検があり、それぞれ法律に則って適切に実施する必要があります。
社用車の点検を怠った場合の罰則
社用車の点検を怠ると、所有者に罰則が科される場合があります。事業用自動車の場合、法律で義務付けられている定期点検を怠ると30万円以下の罰金が科せられます。ここでいう事業用自動車とは、事業として第三者の荷物や人を運び、利益を得ることを目的とする自動車のことで、バスやトラック、タクシーなどを指します(黒ナンバーまたは緑ナンバーの車両)。
営業車や自社の荷物を運ぶための社用車で事業用自動車に該当しない場合(白ナンバーの車両)、日常点検を怠っても具体的な罰則規定はありませんが、整備不良により事故が発生した場合は違反点数や罰則金が科される可能性があります。
また、業務中に事故が発生した際は、法律による罰則以外にも所有者や使用者に対する社会的責任が問われる場合があります。
社用車点検の種類と実施頻度
社用車の点検には主に3つの種類があります。それぞれの概要と実施頻度について解説します。
1, 日常点検
日常点検は、車両の所有者や使用者などが日常的に実施する点検・整備のことです。主にエンジンルームや車両の周り、運転席から、車両に不具合がないか確認する作業を行います。
プロの整備士が実施する点検ではないものの、いち早く車両の不具合を見つけるために重要な点検です。日常点検の頻度には法的な規定はありませんが、社用車においては、1日1回、運行前に実施することが望ましいとされています。
2, 定期点検(法定点検)
定期点検は道路運送車両法第48条で義務付けられている点検・整備です。法定点検とも呼ばれます。日常点検とは異なり、専門的な知識や技術が必要になるため、整備工場などに依頼することが一般的です。
定期点検は、車種によって点検頻度や点検項目が異なります。主な対象自動車の点検頻度・点検項目は以下のとおりです。
主な対象自動車 | 定期点検の頻度 | 点検項目数 |
---|---|---|
自家用乗用車、軽自動車 | 1年ごと | 29項目 |
2年ごと | 60項目 | |
中小型トラック(自家用) レンタカー(乗用車) |
6ヵ月ごと | 24項目 |
12ヵ月ごと | 86項目 | |
バス・トラック・タクシー(事業用) 大型トラック(自家用) レンタカー(乗用車以外) |
3ヵ月ごと | 51項目 |
12ヵ月ごと | 101項目 | |
被牽引自動車 | 3ヵ月ごと | 23項目 |
12ヵ月ごと | 36項目 | |
二輪自動車 | 1年ごと | 35項目 |
2年ごと | 54項目 |
3, 車検
車検は正式名称を「自動車検査登録制度」といい、自動車を安全に運行するために定期的に実施されるものです。自動車が道路交通法や自動車の保安基準を満たしているかどうかを確認するために行われます。車検の有効期限が切れている状態では、公道を走ることはできません。
車検の頻度は車種や車両の用途によって異なりますが、自家用乗用車(事業用車に該当しない社用車)では、新車の場合は購入から3年後、以降は2年ごとに受ける必要があります。
定期点検と車検の違い
定期点検と車検は混同されがちですが、両者には実施する目的に違いがあります。
定期点検は、安全に公道を走行するために、車両に故障や不具合がないか定期的に点検・整備することが目的です。一方、車検は車両が保安基準に適合しているかどうかを検査する目的で実施されます。定期点検のように、車両の故障や不具合を見つけるためではありません。
定期点検と車検の実施時期が重なる場合は、車検時に定期点検を受けることが一般的です。しかし、定期点検と車検の時期が重ならない場合もあるので、社用車の安全な運行のためにどちらも忘れず実施しましょう。
社用車の日常点検で実施する主な業務内容
社用車の使用者向けに、日常点検の主な内容やチェックポイントを紹介します。
1, 運転日報の確認
社用車は通常複数の人が運転するため、前日までに車両の状況を確認しておくことが大切です。運転日報に目を通し、車両の不具合やトラブルが発生していないか確認します。運転日報の記載内容に気になる点がある場合は、直接そのときのドライバーに確認して、状況を詳しく把握し、必要な措置を取りましょう。
2, エンジンルームの確認
エンジンルームの確認は、車両を平たんな場所に駐車し、タイヤに車止めをかけ、パーキングブレーキを効かせた状態で行います。
エンジンルームの主な点検項目は次の5つです。
点検項目 | チェックポイント |
---|---|
ブレーキ液の量 | リザーバータンク内の液量が既定の範囲内にあるか |
エンジンオイルの量 | エンジンに付いているオイル・レベルゲージを抜き取り、付着しているオイルをふき取る。その後ゲージを差し込み、再度抜き取った際にオイルの量がオイル・レベルゲージにより示された範囲内にあるか点検 |
ウィンドウ・ウォッシャ液の量 | ウィンドウ・ウォッシャ液の量が適量か |
冷却水の量 | リザーバータンク内の液量が既定の範囲内にあるか |
バッテリー液の量 | バッテリー液の量が既定の範囲内にあるか、車両を揺らすなどして点検 |
3, 車両周りの確認
車両周りでは、タイヤやランプ類に破損、傷、劣化などがないか状態を確認します。主な点検項目は次のとおりです。
点検項目 | チェックポイント |
---|---|
タイヤの空気圧 | タイヤ接地面のたわみを確認し、空気圧が規定の範囲内であるか点検 |
タイヤの亀裂や損傷 | タイヤの亀裂や損傷の有無、タイヤに異物が付着したりかみ込んだりしていないか入念に点検 |
タイヤの溝の深さ(摩耗の確認) | タイヤの溝の深さが十分であることを、接地面のスリップ・サインを目印に点検。スリップ・サインはタイヤ側面の三角マークのある位置の接地面に現れる |
ランプ類の点灯・点滅、汚れ・破損 | エンジンスイッチを入れ、ランプ類の点灯や点滅具合が不良でないか、レンズなどに汚れや破損がないか点検 |
4, 運転席からの確認
運転席に座り、ブレーキやエンジン、ガラスなどの状態を確認することも大切です。運転席から確認する際の主な点検項目は次のとおりです。
点検項目 | チェックポイント |
---|---|
ブレーキペダル | ブレーキペダルをいっぱいに踏み込んだときに、床板との隙間や踏みごたえが適当であるか |
パーキングブレーキ | パーキングブレーキをいっぱいに引いた(踏んだ)ときの引きしろ(踏みしろ)が適当であるか |
エンジンの音 | エンジンが速やかに始動しスムーズに回転するか、エンジン始動時やアイドリング状態で異音がないか |
エンジンの低速・加速状態 | エンジンを暖機させた状態でアイドリング時の回転がスムーズに続くか、エンジンを徐々に加速したときにアクセルペダルにひっかかりがないか、スムーズに回転するかなどを、走行するなどして点検 |
ウィンドウ・ウォッシャ液の噴射状態 | ウィンドウ・ウォッシャ液がワイパーの作動範囲内に噴射されるか |
ワイパー | ワイパーを作動させ、低速・高速の各動作が不良でないか |
社用車の点検を適切に実施するためのポイント
社用車の点検をスムーズに実施するため、次のポイントを押さえておきましょう。
チェックシートに点検項目をまとめておく
日常点検で確認すべき項目をチェックシートにまとめておくことで、点検漏れを防止できます。国土交通省が公表している日常点検15項目チェックシートを参考に、社内でチェックシートを作成するとよいでしょう。
必要な点検項目やチェックポイントをまとめて整理しておくことで、社用車の使用者は、漏れなくスムーズに日常点検が実施できます。チェックシートを用いて点検した結果、不具合が見つかった場合は専門の業者に修理やメンテナンスの依頼をしましょう。
点検結果を記録・保存する
日常点検の内容や結果は記録を残し、一定期間保存しておきましょう。点検の記録を残しておくことで、過去の点検結果や消耗部品の交換時期などを把握しやすくなります。
また、定期点検や車検を受けた際に、点検整備記録簿に点検実施年月日や点検結果などを記録し、自動車に備え付けておきましょう。点検整備記録簿とは、点検結果や整備の概要を記録・保存して、自動車の維持管理に役立てるための書類です。道路運送車両法第49条では、点検整備記録簿を自動車に備えつけ、一定期間保存することが義務付けられています。
点検整備記録簿の保存期間は、国土交通省令で定められており、3ヵ月点検・6ヵ月点検の対象車は1年保存、1年点検の対象車は2年保存とされています。整備工場などの業者に点検を依頼する場合は、点検整備記録簿に点検結果や整備の内容を記録してもらうことも可能です。
安全運行のために社用車は適切に点検を実施しよう
社用車を安全に運行するためには、日常点検や定期点検を適切に実施することが大切です。日常点検は社用車を運転する従業員などが運行前に都度行うので、抜け漏れなくスムーズに実施できるよう社内でチェックシートを用意しておくとよいでしょう。
点検結果は記録を残しておき一定期間保存しておくと、過去の点検結果や部品の交換時期などを把握しやすくなります。使用者の安全を守り、事故による事業への影響を防ぐために、法律に則って適切に点検を行いましょう。
監修者 佐藤 寿美礼
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP(日本FP協会認定)
監修者 佐藤 寿美礼
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP(日本FP協会認定)
2016年からフリーランスとして活動。金融や投資、税金、保険、住宅ローン、不動産、社会保障制度など、「お金」関係の記事を中心に編集や執筆をしています。子どもの大学進学やマイホーム購入などをきっかけに、お金の管理に興味を持ち、投資や保険、法律などを勉強中です。
執筆者 鈴木 靖子
AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
執筆者 鈴木 靖子
AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
銀行の財務企画や金融機関向けコンサルティングサービスに10年以上従事。
企業のお金に関する業務に携わる中、その経験を人々の生活に生かすためFP資格を取得。
現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆・監修や相談業務を中心に活動中。