尿石症
概要
尿石症とは、おしっこが作られて体外に排泄されるまでの尿路(腎臓→尿管→膀胱→尿道)に石ができて、血尿や頻尿、排尿困難などさまざまな症状を出す病気です。尿石は、おしっこの中に含まれるミネラル分が何らかの原因で溶けきらずに結晶になって出てきます。目に見えないほどの結晶から膀胱とほぼ同じクルミ大の結石まで、大小さまざまです。作られる部位によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と呼ばれます。その中でも尿管結石や尿道結石は、猫にとって危険な状態になる場合もあります。尿管や尿道に大きな結石が詰まり、おしっこを全く出せなくなると、毒素を体外に出せずに(尿毒症)、命に関わる状態になります。
猫の尿石症で最も多く見られるのは膀胱結石です。以前はストラバイトという結石が大多数でしたが、近年は食事の改善などにより、シュウ酸カルシウム結石の割合が増えてきており、膀胱結石においては、ストラバイトとシュウ酸カルシウムが半々です。ストラバイトは食事療法で溶ける可能性がある石の代表なので、膀胱結石の場合、食事療法で約50%は石が溶けることが期待できます。
ただし、猫の腎結石では、ストラバイトはわずか5%しか発生がありません。つまり確率的には、食事療法で石を溶かす可能性は、膀胱結石ほどはないでしょう。また、ストラバイト(発生は少ないですが、シスチン、尿酸塩)以外の石に対して食事療法が行われるのは、石をできるだけ増加させないためと考えましょう。
結石ができる原因は、食事のアンバランスや、飲水量、ストレス、細菌感染、体質などさまざまな原因が考えられます。
症状
血尿(ピンク〜赤や茶褐色)や頻尿になり、何度もトイレに行ったり、少量の尿をいろんな場所ですることが一般的な症状です。排尿痛で性器をしきりに気にして舐めたり、元気や食欲低下が見られる場合もあります。膀胱結石と尿道結石では症状が出ることが多いですが、腎結石では無症状の場合が多いです。腎結石の猫の症状は、背部痛や食欲不振、発熱などです。腎結石や膀胱結石が尿管や尿道に詰まった場合は、おしっこが出せなくなります。尿道(尿管)閉塞でおしっこが全く出せない場合は命に関わるので、早急に獣医師に相談しましょう。
対象
好発品種はヒマラヤン、アメリカンショートヘアー、スコティッシュフォールドが挙げられます。年齢や性別は問わず発生します。重症化しやすいのは、尿道が広がりにくいオス猫である場合が多いです。
予防、治療
予防法は、十分な水分を取ることとストレスを減らし、日常の食生活に気を使うことです。食事は適正なミネラル(特にマグネシウム、リン、カルシウム、シュウ酸に注意)、ビタミンの含まれた食事を適正な量で食べると良いと思います。カロリーオーバーにも気をつけましょう。定期的に尿検査などを行って尿の状態を調べることも、良い予防法だと思います。
治療は、外科治療(尿道閉塞の解除や結石摘出)と内科治療(食事療法、投薬)があります。外科治療は、内科治療に反応しない場合や、緊急性を伴った症状の場合に検討されます。尿道閉塞を解除し、結石を摘出することで速やかに症状が改善することが期待できますが、尿石が作られることに対しての治療ではないので、その後の内科治療や予防が重要になります。
内科治療は、食事療法が中心になります。結石の種類に合った食事に変えることで、体内や尿中に含まれるミネラルバランスが整い、結石ができにくい状態を作ります。尿石症用に作られた療法食では、尿のpHの調整や、水を多く摂らせるための工夫もされています。そのほか、結石を溶解させる薬や、感染が疑われる膀胱炎には抗生剤や消炎剤を投与する場合があります。
監修
白神 久輝 先生
埼玉県草加市にある「ぐぅ動物病院」の院長。2005年4月の開院以来、大学病院や専門病院と連携をとりながら、常に最先端の技術や機器を導入しており、飼い主の方にもわかりやすい説明でサービスを提供し続けている。また病気になりにくい体づくり(予防、日常ケア)のアドバイスも積極的に行っており、地域のかかりつけ医・中核病院として親しまれている。
※「病気事典」には「アクサダイレクトのペット保険」の補償対象外の病気や治療内容も掲載されていることがあります。
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補償対象外の病気については、「契約申込のご案内(兼重要事項説明書)」をご確認ください。 -
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