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猫の病気事典:血液・免疫の疾患

遺伝性溶血性貧血(赤血球ピルビン酸キナーゼ欠損症)

概要

全身に酸素を送る働きをもつ赤血球が何かしらの原因で破壊(溶血)されてしまい、赤血球が減少する(貧血)ことで身体に十分な酸素を送ることができなくなった状態を「溶血性貧血」といいます。溶血性貧血を起こす原因は、自分自身の免疫細胞が赤血球を破壊する場合(自己免疫性)や、寄生虫の赤血球への寄生、毒物(タマネギや人の解熱剤など)、物理的な赤血球の破壊などと共に「遺伝性」のものがあります。
猫の遺伝性溶血性貧血は、ピルビン酸キナーゼ欠乏症が確認されています。この病気は、ピルビン酸キナーゼという酵素が足りなくなって赤血球が破壊され、貧血が起こる病気なので「ピルビン酸キナーゼ欠乏症」と呼ばれています。
ピルビン酸キナーゼは、体内のエネルギーの保存(ADP→ATP)に働きかける酵素です。その酵素が足りないとATPの産生が減少してしまいます。ATPが減少すると赤血球から水とカリウムが逃げてしまい、赤血球が脱水し、縮み、綺麗な球状の形を保てなくなり、やがて壊れてしまいます。赤血球はどんどん骨髄や脾臓などで作られますが、壊れるペースが速いために追いつかず、貧血してしまいます。
生後2〜3ヵ月齢以降に慢性的な貧血が現れます。猫は慢性的な貧血に身体が慣れてしまっているため、無症状な場合が多いです。
現在、猫ではピルビン酸キナーゼ欠乏症を発症する遺伝子の異常について、遺伝子検査(血液検査)によって診断することができるようになりました。好発品種の猫、特に症状がある場合や繁殖をする計画がある場合は、遺伝子検査を受けてみると良いでしょう。

症状

口の粘膜や舌の色が薄く白っぽくなる(貧血)、食欲低下、疲れやすく運動を嫌がる、呼吸や脈が速い、赤茶色の尿(ヘモグロビン尿)をするといった症状が出ます。

対象

若齢な猫に発症が多く、好発品種はアビシニアン、ソマリが挙げられ、そのほか、ベンガル、エジプシャンマウ、ラ・パーマ、メインクーン、ノルウェージャンフォレストキャット、サバンナ、サイベリアン、シンガプーラなどでも発症します。

予防、治療

遺伝性の疾患なので、残念ながら予防法はありません。猫は遺伝子検査によって、発症する可能性が高い猫かどうかを確認することができます。繁殖の計画がある猫は遺伝子検査を受け、遺伝子異常が確認された場合は、繁殖に使用しないことで今後の発生率を下げることができます。
決定的な治療法はありませんが、無症状な猫では経過観察を行い、症状が軽度な猫では対症療法として、安静をとりつつ酸素化や輸血などが検討されます。貧血が重度な場合は、手術で脾臓(弱った赤血球の破壊を行っている臓器)を摘出し、赤血球の減少をおさえることで貧血の改善を促す場合があります。

監修

白神 久輝 先生

埼玉県草加市にある「ぐぅ動物病院」の院長。2005年4月の開院以来、大学病院や専門病院と連携をとりながら、常に最先端の技術や機器を導入しており、飼い主の方にもわかりやすい説明でサービスを提供し続けている。また病気になりにくい体づくり(予防、日常ケア)のアドバイスも積極的に行っており、地域のかかりつけ医・中核病院として親しまれている。

「病気事典」には「アクサダイレクトのペット保険」の補償対象外の病気や治療内容も掲載されていることがあります。

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