口内炎とは口の粘膜に炎症が起きる病気で、粘膜の炎症によって粘膜層が破壊されると潰瘍(粘膜が欠損し、えぐられた部分)が発生します。この病気を潰瘍性口内炎(かいようせいこうないえん)と言います。猫の潰瘍性口内炎では、歯肉と口の粘膜に慢性的で非常に治りにくい重度な炎症が起こります。口腔後部口内炎(こうくうこうぶこうないえん)、歯肉口内炎(しにくこうないえん)とも呼ばれます。猫の7.1%にこの病気が確認されており、一般的によく起こる病気です。
ご自宅でも口を確認することで、この病気のチェックができます。奥歯の歯肉との境界や口の奥の粘膜が異常に真っ赤になり、ザクロ状に歯肉が盛り上がっていたら(初期はほんのり赤い程度)、この病気を疑いましょう。この病気の猫は、口の激しい痛みによる苦痛と常に戦っている状態です。疑われる症状がある場合は、できるだけ早い段階で専門家に相談をして治療を行いましょう。
原因ははっきりとわかってはいませんが、細菌感染とその毒素、免疫の異常、ウイルス感染(カリシ、猫白血病、エイズなど)の関与が疑われています。
症状は、主に口の炎症と痛みによるものです。ヨダレが増え、口の周囲が汚れます。ふせの状態でちょうど口角が触れる前肢の手首の内側が汚れていることがあります。口臭が増え、強烈な痛みで採食時や飲水時に突然ギャーと悲鳴を上げたり、採食時の痛みからご飯の前で考え込むように眺めても食べない行動が確認されます。痛みにより、性格が狂暴になる場合もあります。
平均すると8歳前後の中年齢で発症します。多くの品種の猫で確認される病気ですが、好発品種としてシャム猫が挙げられます。
予防として、ウイルス感染の予防と口腔内の細菌の出す毒素を減らすケアを行うと効果的です。定期的なワクチン予防で、各種ウイルスへの予防を行いましょう。口腔内の細菌に対しては、缶詰タイプの食事は歯垢の原因になり、この病気に影響するため、ドライフードを主体にすると良いでしょう。歯磨きやデンタルジェルによるオーラルケアも、猫が嫌がらなければ行うと良いです。また、ラクトフェリンなどのサプリメントは免疫力を高め、抗菌作用を持ち、口内炎予防効果があると考えられています。
治療は、内科療法と外科療法があります。内科療法は抗生剤の投与によって細菌の活動をおさえたり、抗炎症剤や免疫抑制剤で痛みや炎症を取り除いたり、インターフェロンの投与によって免疫力を高めたりします。どの治療も完治は難しく、残念ながら一時的に良化しても再発や悪化を繰り返す場合が多いです。
外科療法では、抜歯やレーザーによる炎症組織の蒸散などがあります。これらの治療の中で最も効果的なのは奥歯の全抜歯で、術後40〜70%の猫が改善します。状況によってはすべての歯を抜歯します。飼い主としては非常に抵抗のある治療法だと思いますが、猫の奥歯は食べ物をすり潰す歯ではなく噛み切る歯としての機能を主に持っているため、キャットフードのようなもうすでに飲み込める大きさに調整されたフードは何の問題もなく食べることができます。術後の猫の経過を見た感じでは、痛みと苦痛に日々悩まされながら生活する状況より、そこから解放された奥歯のない生活のほうが幸せなのかもしれません。
白神 久輝 先生
埼玉県草加市にある「ぐぅ動物病院」の院長。2005年4月の開院以来、大学病院や専門病院と連携をとりながら、常に最先端の技術や機器を導入しており、飼い主の方にもわかりやすい説明でサービスを提供し続けている。また病気になりにくい体づくり(予防、日常ケア)のアドバイスも積極的に行っており、地域のかかりつけ医・中核病院として親しまれている。
※「病気事典」には「アクサダイレクトのペット保険」の補償対象外の病気や治療内容も掲載されていることがあります。
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