斜視とは眼で物を見るときに、見ようとするものに両目の視線が向かわず、片目が内側(内斜視)や外側(外斜視)、上や下に向かってしまう異常を言います。自分でこの異常を調整することはできません。猫の斜視はほとんどが寄り目になる「内斜視」で、先天的で遺伝的な病気です。それ以外の斜視はまれですが、原因として眼球の筋肉や神経の異常(外眼筋の断裂による外斜視、腫瘍や外傷による交感神経麻痺など)、脳の異常(脳梗塞、脳腫瘍、水頭症など)によって起こる場合があります。
遺伝的な内斜視はシャム猫に多く、生まれながらにして内斜視です。視神経の経路に異常が起こることで発症します。内斜視は本来の視野角よりは狭くなるため(特に外側の視野)、物にぶつかったりしやすくなりますが、先天的な場合は猫自身がうまく調整して生活していきます。また、美観上の問題はありますが、命に関わる病気ではありません。ただし、後天的に斜視が起きた場合は、脳や眼球の異常が起きているサインかもしれません。詳細な脳神経や眼球の検査をすることをおすすめします。
美観上の変化として、眼の位置がズレて見えます。主に猫では寄り目(内斜視)である場合が多いです。視野角が狭くなるため、ものにぶつかったり、足を踏み外したりしやすくなります。先天的な斜視の場合はほとんどの猫が慣れているため、問題なく生活をしています。脳の異常など後天的な斜視は、けいれん発作や元気がなくなったり、ふらつきなどに注意しましょう。先天的な内斜視と水頭症(脳の異常)の好発品種は共にシャム猫ですが、水頭症の斜視は外斜視の場合が多いです。
好発品種はシャム猫です。バーマン、ヒマラヤン、トンキニーズ、ラグドールなどのシャム系品種でも確認されます。ポインテッド柄の猫に起こりやすい病気なので、ポインテッド柄の品種やその雑種猫も注意が必要です。
予防法はありません。症状が確認された場合は、動物病院で今後の方針を相談しましょう。
治療は、先天的な内斜視の猫はそのままの状態で視野が安定していますので、基本的に経過観察を行います。美観上の問題で内斜視を矯正する場合は、外科療法で外眼筋や内直筋の位置を調整して治療します。
白神 久輝 先生
埼玉県草加市にある「ぐぅ動物病院」の院長。2005年4月の開院以来、大学病院や専門病院と連携をとりながら、常に最先端の技術や機器を導入しており、飼い主の方にもわかりやすい説明でサービスを提供し続けている。また病気になりにくい体づくり(予防、日常ケア)のアドバイスも積極的に行っており、地域のかかりつけ医・中核病院として親しまれている。
※「病気事典」には「アクサダイレクトのペット保険」の補償対象外の病気や治療内容も掲載されていることがあります。
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