幽門狭窄
概要
幽門狭窄症(ゆうもんきょうさくしょう)は、何らかの原因で胃の出口(幽門)の筋肉または胃粘膜が分厚く変化し、胃から十二指腸への排出機能に障害が出る病気です。
胃は食べ物のタンクです。食べた物を60〜120分かけて胃液と混ぜ、消化しやすい状態にして少しずつ腸に流していきます。幽門狭窄は「タンクの出口が狭くなった」状態です。食べた物や胃液や唾液は、胃に溜まった状態のまま少量しか流すことができません。犬は胃の不快感から嘔吐や食欲不振を起こします。
この病気の原因は明確にはなっていませんが、先天的に幽門の筋肉(平滑筋)が分厚くなっているタイプや後天的に胃の粘膜と筋肉が分厚くなるタイプがあります。後天性の幽門狭窄は、幽門部から分泌されるホルモン(ガストリン)による胃酸分泌作用、胃壁の細胞の増殖作用の影響や、神経の機能障害、胃の炎症などが関係しているのではないかと疑われています。
この病気の特徴は慢性的な吐き気です。ただし、嘔吐の症状は色々な病気で起こります。嘔吐を繰り返す場合はこの病気を第一に疑うのではなく、この病気以外の原因も十分考慮し、動物病院で総合的に検査を行って原因を探っていきましょう。
症状
主な症状は慢性的な吐き気です。吐物はさまざまで、食後2時間以内の未消化な食べ物、消化されたドロドロの物、白い泡状の唾液、空腹時の黄色い胃液などがあります。固形物は特に通過障害を起こし、嘔吐しやすいです。嘔吐が続くと脱水症状を起こしたり、体重の減少も見られます。
対象
先天性の幽門狭窄の好発犬種はボクサー、ボストン・テリア、ブルドッグなどの短頭種に多いと言われています。後天性の幽門狭窄の好発犬種は、シー・ズー、ペキニーズ、ラサアプソ、プードルに多いと言われています。性別差があり、オスがメスの約2倍発症数が多い病気です。
予防、治療
決定的な予防法はありませんが、慢性的な嘔吐を繰り返したり、リスクの高い犬種の場合は早めに動物病院を受診し、何か病気を患っていないか検査をすると良いでしょう。
治療は、内科療法と外科療法があります。内科療法では、症状を緩和するための対症療法を行います。軽度の幽門狭窄に対して、吐き気止めの薬や胃の機能を改善させる薬によって吐き気をとりつつ、胃から腸への排出を促します。慢性嘔吐による脱水やミネラル喪失がある場合は、点滴治療が行われます。
幽門狭窄は胃の出口が物理的に狭くなる病気なので、内科治療での自然治癒は難しく、対症療法では生活に支障がある場合には、根本的に胃の出口のとおりを良くする外科手術を行います。外科療法では、肥大した筋肉を切開し、狭くなった幽門を広げる形成手術などを行います。手術に対しての経過は良好な場合が多く、麻酔のリスクとコスト面が許容範囲であれば手術を検討します。
監修
白神 久輝 先生
埼玉県草加市にある「ぐぅ動物病院」の院長。2005年4月の開院以来、大学病院や専門病院と連携をとりながら、常に最先端の技術や機器を導入しており、飼い主の方にもわかりやすい説明でサービスを提供し続けている。また病気になりにくい体づくり(予防、日常ケア)のアドバイスも積極的に行っており、地域のかかりつけ医・中核病院として親しまれている。
※「病気事典」には「アクサダイレクトのペット保険」の補償対象外の病気や治療内容も掲載されていることがあります。
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補償対象外の病気については、「契約申込のご案内(兼重要事項説明書)」をご確認ください。 -
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