脱毛症X
概要
脱毛症X(だつもうしょうえっくす、アロペシアX)とは原因不明の犬の脱毛症で、体幹部(首〜おしりまでのいわゆる胴体の部分)に痒みを伴わない左右対称性の脱毛を起こす病気です。この病気は今までに、偽クッシング症候群、成犬発症性低ソマトトロピン症、成長ホルモン反応性皮膚症、去勢反応性皮膚症など約20種類ほどのさまざまな名前で呼ばれてきました。これらはどれも同じ病気のことで、原因不明の脱毛症です。最近はこれらの病名を統一して「脱毛症X」と呼ぶことが多いです。つまり、原因不明な謎(=X)の脱毛症を合わせて「脱毛症X」というわけです。
原因不明なため、検査によって診断をつけることはできませんので、特徴的な皮膚や毛の症状、犬種、年齢などでこの病気を疑います。ただし、似たような皮膚や毛の症状で、全く別の病気(クッシング症候群、甲状腺機能低下症、性ホルモン関連性皮膚症など)である場合も多々あります。このような各種ホルモンの異常から発生した脱毛症の場合は、この病気に対しての治療が必要になります。ご自身の犬でこの病気が疑われる場合は、専門家とよく相談をして、似た病気を除外した上で治療に入ると良いでしょう。
最後に、この病気はあくまで美観上(脱毛)が最大の問題であり、そのほかに苦痛を伴う症状があるわけではなく健康です。類似疾患の除外検査は行うべきですが、脱毛症Xと診断された後に治療を継続して行うか、または経過観察するかは犬の治療への反応や副作用なども踏まえ、よく考えて決定しましょう。
症状
2〜5歳の頃に、上毛(固くて太い毛)が抜けて、徐々に下毛(柔らかくて短い毛)が目立つようになります。脱毛症が起きる前段階で、被毛はゴワゴワと柔軟性がなくなり、縮れた毛が目立ち始めます。典型的な脱毛症Xは、頭や四肢、尻尾などは毛が残り、体幹部は左右対称に薄毛になり、縮れた短く弱々しい毛のみが確認されます。徐々に脱毛が進行すると体幹部は完全に脱毛し、皮膚は黒ずみ(色素沈着)、薄く弾力がなくパサパサとした状態になります。この病気の症状の1つとして、擦り傷など外傷を受けた場所に限定して発毛が見られる場合がありますが、これはほかのホルモン性の脱毛症には見られない現象です。
対象
2〜5歳の若い成犬に発生しやすく、オスの発生率が高いです。好発犬種は、圧倒的にポメラニアンでの発生が多く、そのほかにプードル、チャウ・チャウ、シベリアン・ハスキー、アラスカン・マラミュート、サモエド、スピッツなどが挙げられます。
予防、治療
原因不明であることから、予防法はありません。
多くの内科療法や外科療法が試されていますが、決定的な治療法はなく、治療に対しての反応もまちまちです。一般的に行われる治療は、ホルモンの不均衡によって脱毛症が起きている可能性をふまえた治療法で、去勢や避妊手術による発毛効果、松果体ホルモンの投与、クッシング症候群に類似した治療(副腎皮質ホルモン合成阻害剤の投与)、性腺刺激ホルモンを抑制する薬、免疫抑制剤などが使用される場合があります。どの治療を行う場合も、副作用や治療の反応はさまざまです。これらの治療の中で、松果体ホルモンの投与は比較的副作用が少なく、発毛効果が高い(50%以上の犬で症状が改善)です。
また、この病気は命に関わる病気ではなく、あくまで美観上の問題です。そのほか類似した病気との鑑別はもちろん必要ですが、この病気と判明した場合、治療を行わず経過観察をするのも1つの選択肢だと思います。
監修
白神 久輝 先生
埼玉県草加市にある「ぐぅ動物病院」の院長。2005年4月の開院以来、大学病院や専門病院と連携をとりながら、常に最先端の技術や機器を導入しており、飼い主の方にもわかりやすい説明でサービスを提供し続けている。また病気になりにくい体づくり(予防、日常ケア)のアドバイスも積極的に行っており、地域のかかりつけ医・中核病院として親しまれている。
※「病気事典」には「アクサダイレクトのペット保険」の補償対象外の病気や治療内容も掲載されていることがあります。
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補償対象外の病気については、「契約申込のご案内(兼重要事項説明書)」をご確認ください。 -
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