僧帽弁閉鎖不全症
概要
僧帽弁閉鎖不全症は、犬の心臓病の中で最も多い病気です。
心臓には4つの部屋と4つの弁があり、弁は血液の逆流を防ぐ働きをしています。僧帽弁閉鎖不全症は、血液が肺から戻ってきた部屋(左心房)と全身に送る部屋(左心室)の間の弁(僧帽弁)がしっかりと閉じなくなることで起きる病気です。
この病気になると、本来は左心室から全身に流れる血液が左心房に逆流してしまいます。逆流が悪化すると肺にも血液が逆流してゆき、肺の血圧が上がり肺に水が溜まったり(肺水腫)、心臓が大きくなり気管を圧迫して咳が出たり、全身に血液を送りにくくなり失神したりとさまざまな症状が現れてきます。原因として、犬ではほとんどの場合、年齢とともに弁がいびつにむくみ(粘液腫様変性)、かみ合わせが徐々に悪くなることから発症します。
症状
初期に症状はほとんどありません。症状が出る場合は、激しい運動をしたときに軽く空咳が出る程度で、犬も元気です。この段階で、心臓の音に雑音がわずかに聞こえます。病気が進行してくると咳が頻繁になり、疲れやすくなって散歩を嫌がります。肺水腫になると湿った咳をするようになり、呼吸が速く、苦しそうになり、舌が青紫色に変色します。全身にうまく血液を送れない場合には、舌が白っぽく変色し、パタッと倒れて意識を失ってしまいます。しかし、数分で意識が戻りヨロヨロと立ち上がる場合が多いです。ほかの心臓病や呼吸器の病気も似たような症状が出る場合が多く、最終的な診断は心臓の検査で行います。
対象
高齢な小型犬に多いです。好発犬種はキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、マルチーズ、シー・ズー、チワワ、ポメラニアン、プードル、ペキニーズ、パピヨンなどが挙げられます。5歳以降から発症が増え始め、高齢犬の3割がこの病気を発症すると考えられています。キャバリアに限っては遺伝的な要因から5歳以下の若齢でも発生し、1歳未満の10%に僧帽弁閉鎖不全症が確認されていますので、特に注意が必要です。
予防、治療
決定的な予防法はありませんが、僧帽弁閉鎖不全症は初期に心臓の定期検査や聴診をすることで発見することができる病気です。高齢になるほど発症しやすくなる病気なので、早期に発見し、治療することをおすすめします。
治療法は食事療法と内科療法と外科療法があります。症状の進行度によって治療を使い分けることが多いので、専門家と相談して方針を立てていきましょう。食事療法としては、ナトリウムを制限した食事に変更し、心臓の負担を減らします。内科療法としては、強心剤や利尿剤、血管拡張剤、不整脈治療薬などを使用してむくみを取り、心臓の負担を抑えつつ力強く打てるようにしていきます。外科療法は専門性のある病院でのみ行われ、僧帽弁の修復を行います。
監修
白神 久輝 先生
埼玉県草加市にある「ぐぅ動物病院」の院長。2005年4月の開院以来、大学病院や専門病院と連携をとりながら、常に最先端の技術や機器を導入しており、飼い主の方にもわかりやすい説明でサービスを提供し続けている。また病気になりにくい体づくり(予防、日常ケア)のアドバイスも積極的に行っており、地域のかかりつけ医・中核病院として親しまれている。
※「病気事典」には「アクサダイレクトのペット保険」の補償対象外の病気や治療内容も掲載されていることがあります。
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補償対象外の病気については、「契約申込のご案内(兼重要事項説明書)」をご確認ください。 -
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