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犬の病気事典:内分泌の疾患

糖尿病

概要

膵臓の一部の細胞(β細胞)で作られるインスリンが十分に働かないために、血液中のブドウ糖(血糖)が異常に高くなる病気です。インスリンというホルモンは、食餌からとられた糖分を血液から体の細胞に運びエネルギーとして利用できる様にする働きをしています。
糖尿病は大きく分けるとT型とU型に分けられます。犬糖尿病のほとんどはT型糖尿病で、膵臓のβ細胞が壊されたり、回復不可能なほど疲れてしまって、血液中に出るインスリンが減り、治療にインスリン注射の継続が必要となったりする場合がほとんどです。U型糖尿病は犬には少なく、食後のインスリンの分泌反応が鈍ったり、インスリンの作用が悪い(インスリン抵抗性)ことによりうまくインスリンが働けなかったり、食事療法や生活習慣の改善のみでも血糖値が下がったりするタイプです。単純に糖尿病を発症するというよりは、クッシング症候群や未避妊メス犬の性ホルモン異常や自己免疫疾患、膵炎などが基礎にあり、そこに遺伝的な素因や食事、ストレスなどが加わってインスリンが作用しにくくなり、最終的に膵臓が疲弊してしまいインスリンが出せなくなる場合も多いです。

症状

一番気がつきやすい症状は、異常に水を飲み、おしっこを大量に出したりいろんな場所におもらしをしたりする「多飲多尿」です。異常な飲水量の目安は、24時間で体重1kg当たり水90cc以上の量(5kgの犬で450cc)です。
多飲多尿はなぜ糖尿病でおこるのでしょう?例えば、しょっぱいものを食べたら私たちもお水をたくさん飲みたくなります。塩分を尿で出すには大量の水が必要なわけです。塩分と同様に、糖分も尿で出すのに大量の水が必要なのです。そのため、糖尿病により高血糖になっている犬は、とにかく大量の水を欲しがります。
そのほかには異常な食欲と体重減少、太鼓腹になったりします。治療が遅れると細菌感染や肝障害、白内障、しびれ、糖尿病性腎症などの合併症を起こす場合があります。また、致命的な糖尿病性ケトアシドーシスという状態になると、元気がなくなりぐったりして、嘔吐や下痢が始まり、昏睡状態になり最悪の場合死んでしまう可能性もあります。このような症状がある場合は緊急性を伴う状態なので、早急に動物病院に行きましょう。

対象

糖尿病の発症のピークは中年以降(7〜9歳)で、4歳〜老齢犬までが好発年齢です。オスよりメスの方が2倍かかりやすく、特に未避妊のメスはリスクが高いとされます。犬種ではミニチュア・ピンシャー、ダックスフンド、ビーグル、プードル、シュナウザーなどがかかりやすいと言われています。クッシング症候群、膵炎、自己免疫疾患などを発症している犬も注意が必要です。

予防、治療

予防は、ストレスの軽減、暴食過食を避けて栄養バランスの整った食事、適度な運動を心がけて太らせないことや避妊手術が考えられます。死に至る可能性のある危険な病気なので、糖尿病が疑われる場合は、早急に病院に連れていきましょう。
犬の糖尿病の多くはT型糖尿病で、インスリンが不足することで発症します。治療は初期からインスリンを注射で補うことが基本で、良好な健康状態を保ちつつ、インスリン投与による副作用(低血糖)のリスクを最低限におさえることのできる量を速やかに見つけ、1日1回または2回インスリンを注射します。補助的に食事療法も検討します。治療がうまくいっている場合は、多飲多尿がおさまり、体重も増加して活動的になります。
また、インスリン治療による低血糖にも注意が必要です。体が冷たくなったり、ぐったりしたり、嘔吐したり、泡を吹いたり、けいれんを起こしたりしたら、病院に連れて行きましょう。定期的な検査(血糖値測定、糖化アルブミン測定)でインスリンの過不足を調整することで、低血糖のリスクは軽減できます。

監修

白神 久輝 先生

埼玉県草加市にある「ぐぅ動物病院」の院長。2005年4月の開院以来、大学病院や専門病院と連携をとりながら、常に最先端の技術や機器を導入しており、飼い主の方にもわかりやすい説明でサービスを提供し続けている。また病気になりにくい体づくり(予防、日常ケア)のアドバイスも積極的に行っており、地域のかかりつけ医・中核病院として親しまれている。

「病気事典」には「アクサダイレクトのペット保険」の補償対象外の病気や治療内容も掲載されていることがあります。

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