犬の認知症とは、脳の老化によって発症する問題行動を伴う病気で、加齢に伴って高齢犬で起こる問題行動のうち、ほかの病気が原因ではないものを言います。犬も高齢になると徐々に脳の機能が落ちていきます。認知症を発症した犬の脳には、神経の機能障害を起こすアミロイドβ蛋白の沈着、脳内のアポトーシス(細胞死)、大脳皮質の萎縮、脳細胞の酸化障害など、人の認知症の脳にも認められるいくつかの変化が確認されています。これらが犬の認知症の原因ではないかと疑われていますが、残念ながら解明されていません。また、高齢な犬と過ごしている飼い主は「年を取って、うちの犬は少し頑固になってきたわね」くらいの感覚で初期の認知症の犬の変化を見逃す場合も多く、徐々に症状は重たく深刻になっていきます。
認知症の症状は大きく4つに分けられます。1つ目は睡眠・覚醒サイクルの障害、2つ目は社会的相互関係(人や犬同士のふれあい)の障害、3つ目はトイレのしつけの喪失、4つ目は見当識障害(時間、方角、目的などの喪失)が起こります。
これから何個か質問をします。あなたの犬は昼間必要以上に寝ていませんか?そして夜なかなか寝ずに起きて徘徊したり、夜鳴きをしませんか?飼い主と一緒に遊ばなくなったり、逆に強く飼い主と触れ合おうとしたり、うまく遊べず苛立ったりしませんか?部屋の中のトイレ以外の場所に失禁や脱糞をすることが増えていませんか?最近、部屋のものにぶつかったり、慣れた場所で迷ったり、物の隙間にはまって動けなくなったりしていませんか?このような質問に思い当たる問題行動が増えてきたら、認知症が疑われます。
認知症が重症化すると、飼い主は、行動の異常や夜鳴きなどで犬の変化に戸惑い悩む場面が多くなってくるでしょう。完治は難しい病気ですが、犬と飼い主双方のためにも犬の変化を見逃さず、早めに症状の緩和や不安を取り除くことができると良いと思います。
脳の機能の低下による症状が出ます。初期は軽い程度の許容範囲内の症状でも、徐々に進行して重症化し、やがて大きな問題行動になっていきます。普段過ごしている環境で迷子になったり、間違えた場所を通ろうとしたり、部屋の隅に頭を突っ込んでバックできずに鳴いたりします。飼い主や同居犬に無関心になったり、逆に強く遊ぼうと誘ったりします。日中によく寝て、夜は寝ずに夜鳴きや徘徊をします。トイレ以外で粗相をしたり、飼い主の合図への反応が乏しくなります。過食になる場合もあります。怒りっぽくなり、目的なく部屋を歩き続けたりします。
犬の認知症は高齢犬、特に11歳以上で増加し始め、11〜12歳の28%、13〜14歳の45%、15〜16歳の68%で何らかの問題行動が起きています。好発犬種は主に日本犬で、柴犬、紀州犬、甲斐犬、北海道犬などが挙げられます。
予防法は、日常生活のリズムを保ち、脳の負担を極力避けることです。適度な散歩や日の光をしっかり感じる生活を送ることで昼夜の認識機能を高めたり、新しいおもちゃやトレーニングを行って脳を適度に刺激します。そして飼い主とのコミュニケーションを取る時間をしっかりと確保してあげましょう。そのほか、抗酸化物質、ビタミン剤などのサプリメントを投与して脳の損傷を予防します。
治療は、できる限り重症化する前に開始すると効果的です。脳の血流を増加させる薬や脳の神経を保護する薬、脳の機能を活性化する薬などで進行を遅らせつつ、不安を取り除く薬を投与します。また、食事療法として不飽和脂肪酸を豊富に含む食事を与える事も、脳の機能を高め、治療や予防に生かすことができます。
白神 久輝 先生
埼玉県草加市にある「ぐぅ動物病院」の院長。2005年4月の開院以来、大学病院や専門病院と連携をとりながら、常に最先端の技術や機器を導入しており、飼い主の方にもわかりやすい説明でサービスを提供し続けている。また病気になりにくい体づくり(予防、日常ケア)のアドバイスも積極的に行っており、地域のかかりつけ医・中核病院として親しまれている。
※「病気事典」には「アクサダイレクトのペット保険」の補償対象外の病気や治療内容も掲載されていることがあります。
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