膀胱腫瘍は犬の泌尿器の腫瘍の中で最も多い腫瘍で、全腫瘍の約0.5%を占めます。膀胱腫瘍の発生由来(粘膜、筋肉、血管、神経、分泌腺など)によってさまざまなタイプがありますが、圧倒的に膀胱粘膜上皮由来の悪性腫瘍「移行上皮癌」が多いです。犬の膀胱、尿道の腫瘍115頭の調査によると、そのうち100頭は移行上皮癌で、そのほかの癌が11頭、わずかに3頭が良性腫瘍でした。この結果からも膀胱の腫瘍が確認されたらまず悪性腫瘍(癌)を疑い、早めに対策を考えることが大事だと思います。
膀胱腫瘍の初期の症状は、頻尿や血尿で膀胱炎を患っている犬と同じ症状です。そして膀胱炎の治療で一時的に症状が改善する場合が多く、初期の膀胱腫瘍は見逃されがちです。移行上皮癌は膀胱の中でも、腎臓から膀胱へ尿を送る管(尿管)や膀胱から尿を排泄する管(尿道)などが集中する部位(膀胱三角)に最も多く発生し、発見が遅れた場合は尿管や尿道が腫瘍によって詰まり、急性腎不全を起こしたり、癌の転移(リンパ節、肺など)によって命に関わる事態になります。
完治は難しい病気ですが、膀胱腫瘍の発生率が上がる高齢な犬では、頻尿や血尿を膀胱炎と思い込まず、超音波検査で移行上皮癌は確認できる場合が多いので、画像検査を含めた総合的な検査を受けることをおすすめします。
初期の主な症状は、尿の回数が増え、少量の尿をする(頻尿)、尿に血が混じる(血尿)、尿をする仕草をするが尿が出ない(排尿困難、残尿感)などがあります。進行すると膀胱全体に腫瘍が広がり、膀胱に尿を貯めることができなくなり、尿漏れが起きたり、腫瘍が尿のとおり道を圧迫して排尿困難や嘔吐などが起こります。腫瘍が転移をした場合、呼吸困難や咳(肺転移)、足の痛み(骨転移)が確認される場合があります。
好発犬種としてスコッチ・テリア、ワイヤー・ヘアード・テリア、ウエスト・ハイランド・ホワイトテリア、ビーグル、シェットランド・シープドッグ、コリーなどが挙げられます。平均9〜10歳齢の高齢犬で発生します。膀胱腫瘍のほとんどは悪性で、移行上皮癌がそのほとんどを占めます。性別差があり、オスに多い腫瘍です。
決定的な予防法はありません、初期の症状(頻尿、血尿)を見逃さず、早めに動物病院に相談しましょう。
治療は内科療法と外科療法があります。腫瘍の状態(悪性度、発生部位、転移など)によってどの治療を行うか検討していきます。
一般的に外科療法で完治が期待できる条件は、転移がなく3cm以上余裕をもって腫瘍を摘出できる場合(膀胱三角部に発生していない場合)で、それ以外の腫瘍は内科療法を選択する場合が多いです。
外科治療では、進行して尿路が閉塞した移行上皮癌に膀胱を全摘出する手術や、膀胱を温存したまま尿管ステントを尿路に留置して尿の詰まりを取り除く手術を行う場合があります。膀胱全摘出は、尿管を膀胱以外の結腸や尿道、膣などへつなぎ変えますが、尿漏れや皮膚炎、感染症など合併症や転移、再発が高確率で起こります。この手術を行う場合は、術後の管理も含め、よく専門家と相談をした上で行うようにしましょう。
ほとんどの犬は内科療法を選択します。一部の消炎剤は移行上皮癌に抗腫瘍効果があります。抗がん剤に比べると副作用が少なく、移行上皮癌の増殖をおさえる薬として使用されます。そのほか、抗がん剤や放射線治療などが行われる場合があります。
白神 久輝 先生
埼玉県草加市にある「ぐぅ動物病院」の院長。2005年4月の開院以来、大学病院や専門病院と連携をとりながら、常に最先端の技術や機器を導入しており、飼い主の方にもわかりやすい説明でサービスを提供し続けている。また病気になりにくい体づくり(予防、日常ケア)のアドバイスも積極的に行っており、地域のかかりつけ医・中核病院として親しまれている。
※「病気事典」には「アクサダイレクトのペット保険」の補償対象外の病気や治療内容も掲載されていることがあります。
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