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犬の病気事典:皮膚の疾患

膿皮症

概要

膿皮症(のうひしょう)は、皮膚の細菌感染が原因で起こり、その名の通り皮膚が膿んでしまう病気です。犬の皮膚病として頻繁にみられ、愛犬と飼い主さんを悩ませる病気です。この病気で増える細菌は、環境など外部からの細菌感染によって発生するのではなく、ほとんどの場合愛犬の皮膚に常在する細菌(ブドウ球菌)が異常増殖して起こります。何度も繰り返し発症し悩まされる場合、おそらく皮膚の細菌叢の異常、皮膚のバリア機能の異常、日常の不適切なスキンケア、愛犬の基礎疾患(アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、クッシング症候群や甲状腺機能低下症など)、不適切な投薬治療、診断などが存在する可能性があります。原因はさまざまある病気ですが、症状は似通っているため詳細な診断や治療が必要です。悪化し、皮膚構造が破壊されると炎症が皮膚の深い場所に進み、深在性膿皮症になります。また細菌感染が主体ではなく子犬(半月齢未満)に発生する特徴をもつ若年性膿皮症もあります。

症状

一般的な膿皮症の症状は、皮膚にポツポツと多発する赤い炎症部位と激しい痒み、膿をため込んだカサブタや虫食い状の脱毛、毛ごと取れる様なカサブタ、フケが全身に発生します。慢性化すると皮膚が黒ずむ場合もあります。重度に日焼けをした状態を想像してみて下さい。日焼けの後はまず皮膚が真っ赤に腫れ熱を持ち、次第に数日で痒みになり、1週間〜2週間後に皮膚が剥がれだします。そして繰り返し日焼けすると黒いシミが残るように、犬の膿皮症も細菌が増殖し皮膚炎が起こるとまず赤いポツポツ(丘疹)ができて、痒みが発生します。そして膿が溜まりやがてカサブタになり2週間程度で毛ごとカサブタが剥がれ、フケが増えます。何度も繰り返すと皮膚には黒ずみ(シミ)が発生するわけです。皮膚の症状だけで、他の皮膚病なのか、膿皮症なのか判断することは難しいと思います。一般的によく見かけるタイプの膿皮症以外にも、皮膚の深い場所に進行する深在性膿皮症は口周辺や四肢端や体幹部に発生しやすく、膿や血液混じりの汁を排出するしこりが確認され、痒みや痛み、発熱、リンパ節の腫脹がみられる場合もあります。子犬に発生する若年性膿皮症では、口唇〜鼻、目や耳周辺に膿汁が付着し脱毛します。若年性膿皮症は免疫の異常が疑われ、全身のリンパ節の腫脹や食欲不振、発熱がみられる場合もあります。

対象

すべての犬種が引き起こす可能性があります。特にアトピー性皮膚炎(ウエストハイランド・ホワイトテリア、柴犬)や食物アレルギー(コリー、ジャーマン・シェパード)、クッシング症候群(トイ・プードル、ダックスフンド)や甲状腺機能低下症(ゴールデン・レトリーバー、ミニチュア・シュナウザー)などの基礎疾患を発症しやすい犬種は注意が必要です。

予防、治療

皮膚に常在する菌が異常増殖する条件を避けることで予防しましょう。細菌は増殖する栄養源があり、ジメジメとして温かい環境を好みます。皮膚には適度な温度と栄養源(皮脂など)もあり、そこに水分が加わると増殖します。犬は鼻や肉球以外に汗をかかない動物ですので、皮膚が汗によってジメジメとすることはありません。しかし、雨の中での散歩・シャンプーの後に塗れた体をそのままにしていたり、乾かし方が甘いと、皮膚がジメジメするため、膿皮症の発生する可能性を高まります。
また皮膚のバリア機能に問題が起こると膿皮症が発生しやすくなります。過度なブラッシングや足先に微小な傷を負うような激しい運動は避け、皮膚を保護する成分を含んだ犬用シャンプーや必須脂肪酸を含んだ犬用サプリメントの投与などは皮膚のケアをサポートしてくれます。
膿皮症を発症した場合、治療としては、一般的に抗生剤の投与(3週間以上)と菌を鎮める犬用の薬用シャンプーで週1〜2回程度、薬浴します。若年性膿皮症では免疫異常が疑われるため免疫抑制剤の投与が必要です。
治療に反応し完治することが多い病気ですが、反応が鈍い場合や、何度も繰り返し膿皮症を発症する場合には、基礎疾患が無いか、膿皮症に類似した皮膚病では無いか、細菌が薬に耐性を持っていないかなどの精密検査が必要になります。

監修

白神 久輝 先生

埼玉県草加市にある「ぐぅ動物病院」の院長。2005年4月の開院以来、大学病院や専門病院と連携をとりながら、常に最先端の技術や機器を導入しており、飼い主の方にもわかりやすい説明でサービスを提供し続けている。また病気になりにくい体づくり(予防、日常ケア)のアドバイスも積極的に行っており、地域のかかりつけ医・中核病院として親しまれている。

「病気事典」には「アクサダイレクトのペット保険」の補償対象外の病気や治療内容も掲載されていることがあります。

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