更新日:2023年12月21日
ゴールデン・レトリーバーの原産国はイギリスですが、詳しい歴史はほとんどわかっていません。1865年にイギリスの伯爵・トゥイードマウス卿が飼育していたウェービー・コーテッド・レトリーバーから生まれた黄色の子犬が始祖となったといわれています。当時のイギリスでは狩猟が盛んで、水辺でも陸上でも俊敏な動きができるようにと、伯爵はセターやウォーター・スパニエルなどとの交配を進め、現在のゴールデン・レトリーバーの土台が確立したといわれています。
1903年、イギリスのケネルクラブには「フラットコート・ゴールデン」として登録されましたが、別に「フラット・コーテッド・レトリーバー」という犬種がいたため、区別するために「ゴールデン・レトリーバーまたはイエロー・レトリーバー」に名称変更され、1920年にゴールデン・レトリーバーに統一されました。
日本で血統書を発行する機関であるジャパンケネルクラブ(JKC)では、理想の体高を、オスは56〜61cm、メスは51〜56cmとしています。クラブでは体重の規定は特に定められていませんが、一般に、オスは29〜36kg、メスは25〜32kg程度です。
毛色は光沢のある美しいゴールドまたはクリームの色調で、もともと水辺でも活躍する狩猟犬であっただけに、被毛は水をよくはじきます。胸や腹、尾の下側は特にふさふさしており、手足には飾り毛がついています。
外見が似ていること、イギリス原産であること、賢いことから、ラブラドール・レトリーバーの長毛種と誤解されることも多いようですが、原産種は別の犬種です。
ゴールデン・レトリーバーはダブルコートなので、換毛期には大量の抜け毛が発生します。分厚い被毛を美しく保つために、通常は週に数回、換毛期は毎日のブラッシングが大切です。また、月に1〜2回はシャンプーを行いたいもの。ぬらしたままにしておくと、皮膚病の原因になったり、皮膚にシミができたりするため、シャンプーのあとは丁寧にドライヤーで乾かしてあげます。
ゴールデン・レトリーバーは、寒さには比較的強い犬種ですが、夏の暑さに弱く、室内飼いでも室温管理に気を配るようにしてください。
個体差はありますが、寿命はだいたい10〜12歳。7歳を過ぎるとシニア犬とされています。
ゴールデン・レトリーバーは、おとなしくて愛情深い性格です。人にも他の犬にもフレンドリーです。レトリバーには「回収する」という意味があり、狩りの獲物を主人のところまで持ってくる狩猟犬でした。盲導犬や災害救助犬として活躍するほど学習能力が高く、しつけやすい犬種といえます。遊びが大好きなので、興奮してはしゃぎすぎることや、ボールやおもちゃなどを誤飲してしまうこともあるため注意が必要です。
ゴールデン・レトリーバーを飼う上で、最もポイントとなるのが運動量の確保です。体力があるぶんたっぷり運動させる必要があり、朝夕に30分から1時間程度の散歩は欠かせません。それでも遊び足りず、運動不足になってストレスがたまると、無駄吠えなどの問題行動を起こすこともあるようです。
ドッグランに連れて行き、ボールやディスクなどの「回収する」遊びを取り入れるなどして、存分にストレス発散させてあげましょう。
歩くときにふらついたり、おかしな座り方をします。遺伝的要素の強い病気ですが、栄養や運動などの環境も重要です。痛みを和らげ、後肢の機能をできるだけ改善する(もしくは維持する)治療が行われます。
造血性腫瘍で、癌化したリンパ球の増殖がみられます。犬の場合では多くは体の各リンパ節が腫れてきます。悪性腫瘍(癌)のなかでも、化学療法(抗がん剤療法)の効果が十分に研究されていますので、早期発見できれば予後も期待できます。
食べ物、液体、もしくはガスの急速な貯留によって胃が膨張し、ねじれてしまう疾患です。ねじれた胃が血流や神経に影響を及ぼしショックを起こすため、治療しなければ急速に死に至るような恐ろしい病気です。大型で胸の深い犬種がなりやすく、食後すぐに運動させることによって、より誘発されます。
甲状腺ホルモンが十分に分泌されなくなる病気です。元気がない、震える、脱毛、皮膚の黒ずみなどが現れます。また、皮膚が肥厚し、「悲しそうな顔」になることもあります。その他にも、不妊や無発情、筋力の低下、神経障害、循環器障害が認められることもあります。
この品種では、右心室と右心房を区切っている三尖弁が先天的に形成不全を起こすことが多く、それゆえ、起こりやすいことが知られています。疲れやすくなる、咳が出る、腹水が溜まるなどの症状がみられます。
左心室から全身へ血液を送る大動脈についている弁が十分に開かない疾患です。軽度の場合では大きな臨床症状は見られませんが、重度では、脱力、虚脱、突然死の危険もあります。
興奮や運動により悪化する喘鳴が主な臨床徴候ですが、重症例では呼吸困難によるチアノーゼや虚脱が起こることもあります。
膵臓のβ細胞という細胞の腫瘍で、このβ細胞はインスリンを産生しているため、増殖した細胞から多量のインスリンが分泌され、低血糖を引き起こします。低血糖が長く続けば意識がなくなりけいれんや昏睡状態に陥ります。多くが悪性で、転移の可能性も高いです。
ゴールデン・レトリーバーは、悪性腫瘍(癌)で亡くなることが多い犬種です。残念ながら現在では人のような腫瘍マーカーが存在しないため、腫瘍を発見しづらいのが現状です。
しかし、通常の血液検査や画像診断などでも、十分に腫瘍の早期発見を期待することができますので、是非、積極的に健康診断を行なうことをお勧めいたします。
三宅 亜希先生
日本で唯一の会員制電話どうぶつ病院「アニクリ24」院長。都内の動物病院にて小動物臨床に従事したのち現職。繊細なコミュニケーション力を生かし、小動物医療の現場で毎日寄せられている様々な相談に応じている。
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